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2006年10月03日

情報共有は企業経営に何をもたらすのか ~IPコミュニケーションシステム導入、成功のツボ~

掲載誌 雑誌「情報化の処方箋」(ソフトバンククリエイティブ)
掲載年月 2006年10月(第12巻)
執筆者 (株)アイドゥ 代表取締役 井上きよみ

中小企業診断士
シスコシステムズ認定 CCNA
マイクロソフト認定 MCSE
マイクロソフト認定 MCSC
OCP認定 ビジネスプロデューサ(BP)


1人1日10コールで社員100人なら、年間1,800万円の損失?!

電話、FAXに加え、電子メールが伝達手段に加わって久しく、昔に比べて便利にはなったが、それでも連絡業務にかかるストレスが少なくなったかと言えば、迷わず「はい」と答えられる人は少ないだろう。
連絡業務に対するストレスは、精神面だけでなく、その時間ロスは金額的損失に直結する。
キヤノンの開発部門が以前に自部門で実施した調査では、電話で相手とつながる割合は35%だという。そこで、相手につながらない場合、伝言を依頼するのに1分、相手からの折り返し時にこちらが不在である確率を50%、再度かけるまでの手間を3分として計算してみよう。1人1日10件電話をかける場合、伝言依頼に6分30秒、かけ直しに9分45秒で計16分15秒のロスとなる。実際には、この時間以外に、折り返し・かけ直し時に行っていた作業への復帰に相当な時間を要するはずである。とは言え、明確なロス時間だけを勘案しても、1ヶ月で約6時間、1年で72時間。100人の組織であれば7,200時間、平均時給2,500円とすれば年間1,800万円のコストをムダにすることになる。


ワークスタイルをも変えるIPコミュニケーション

連絡に係る時間損失と精神的ストレスは、それぞれのコミュニケーションツールが持つ「制限」によるものが大きい。その制限を外す鍵が、デジタルと通信の融合だ。
IPネットワーク化されたインフラに、電話・FAX・メールなどをデジタルデータとして統一的に扱えるデータベースシステムを構築し、コミュニケーションの「いつでも・どこでも」というユビキタス化を推進する(図1)。ここでは、このようなシステムを「IPコミュニケーション」と呼ぶことにする。

[図1] IPネットワークに統合されるコミュニケーション・ソリューション
[図1] IPネットワークに統合されるコミュニケーション・ソリューション


すると、それまで別々のツールだったものが、連携を取れるようになり、TPOに合った選択が可能となる。
例えば、離席中にダイヤルインへかかってきた電話。自分の携帯電話に自動転送するようにしておけば、周囲の人を煩わすことなく、相手とすぐに会話ができる。もちろん、商談や会議などで中座できない場合は、部署内で取り次ぎ、緊急であれば、携帯電話にメッセージを入れてもらうように設定しておく。
電話をかける/受ける当事者双方の二度手間をできるだけ省けられれば、他人宛電話の取り次ぎ・伝言業務も減らせる。時間ロスの削減は、先ほど算出したコストを大きくカットできる。ストレス緩和による生産性向上も期待できる。
離席時だけでなく、同じことが、外出中や自宅作業時でも同様にできると、在宅勤務の可能性を拡げられるなど、ワークスタイルの変革を導く。

図2、図3は、IPコミュニケーションで実現できる主な機能である。

実際には、これらの機能を組み合わせて利用する。上記の例も、バーチャル会議を除く3つの機能の掛け合わせで実現されている。

[図2] IPコミュニケーションの主な機能
[図2] IPコミュニケーションの主な機能
図3 IPコミュニケーションの主な機能
機能内容メリット
フリーアドレス、 状況に応じた転送従来、端末機に対して番号が振られていたが、フリーアドレスでは、番号は個人・部署と紐付けされる。 状況に応じた転送とは、かかってきた電話に対し、どのように転送するかを細かく設定できる。端末機の場所に縛られずに作業や席替えができる。転送と組み合わせれば、場所に対する制限がほぼなくなる。在宅勤務、好きな場所での作業、タスクフォースなどがやりやすくなる。
ユニファイド・メッセージング電話、メール、FAXなどのメッセージを統一的に扱える。蓄積したメッセージはメールソフトを閲覧するように見たり、検索できる。取り次ぎ等の手間が軽減できる。閲覧性・検索性が向上し、作業効率が向上する。
プレゼンス在籍、外出、会議中といった各人の所在と状態を確認できる。電話をかける前に相手の状態がわかり、それに応じた行動ができる。取り次ぎなど、他人の手を煩わせないで済む。所在・状態がわかるので安心できる。
バーチャル会議複数人で同時に音声、映像、ファイルなどを用いた打合せができる。移動にかかる時間と費用を削減できる。実際に集まる必要がないので、気軽に打合せができる。会議資料などのドキュメントを共有すれば、より密度の濃い打合せができる。


IPコミュニケーションで競争優位を勝ち取った事例

コミュニケーションの効率化・高度化は、ムダの削減にとどまらず、競争優位を確率できる。IPコミュニケーションによる競争優位事例をいくつか紹介しよう。

  • サポートセンター - 在宅勤務により質の高い電話サポートを安価に提供  <利用機能:プレゼンス、フリーアドレス、状況に応じた転送、バーチャル会議> 在宅オペレータの状態がプレゼンスにより明確にわかり、外部顧客からの電話をその状態に応じて自動的に振り分けることで、話中率の削減、待ち時間の短縮を実現できた。また、在宅勤務というワークスタイルにより、優秀な人材を集めやすい。バーチャル会議は、オペレータ間の意見交換や本社からの新機能紹介などに幅広く利用でき、オペレータの精神面のケアやスキル向上に大いに役立っている。顧客とオペレータ間のやりとりも記録でき、適切な評価、顧客満足度のアップにつなげている。 これらにより、同業他社と同等以上のサービスを、他社の2/3以下の料金で提供できるようになった。
  • オフィス機器の営業部隊 - 顧客の「例のあの件」に迅速対応
     <利用機能:ユニファイド・メッセージング、フリーアドレス、状況に応じた転送>
    顧客管理システムと連携。顧客から電話がかかってきた時、担当者が在席であれば、担当者のPCに自動的に該当顧客のデータを画面表示。いなければ、サブ担当者に自動的に回す。顧客の「先週の、例のあの件だけどね」という曖昧な問いかけにも、「はい、複合機にするか専用機にするかの件ですね」と迅速で的確な対応が可能となった。客先訪問時に出た質問にも、会社との連絡が取りやすくなったことで、その場で返答できる割合が増え、印象アップにつながった。結果として、顧客からのリピート率が、30%増加した。
  • 化粧品の海外委託製造 - 品質トラブルに機敏な対応
     <利用機能:バーチャル会議、ユニファイド・メッセージング>
    生産管理システムと連携。販売店から寄せられた「異臭がする」というトラブルに対し、生産ロットを確認し、即、現地工場へ連絡。現場に配置したカメラを現地工場側の操作、本社からの遠隔操作を行いながら、バーチャル会議そ実施。そこで原因を正確に把握でき、その対処法も検討できた。全国の販売店に緊急回収のFAXを一斉送信すると共に、顧客システムから該当商品を仕入れた販売店を自動抽出し、電話でフォローをする。
    インシデント対応の的確さ・速さで、失いかけた顧客を取り戻したばかりか、顧客からの高い信頼を勝ち取った。
  • ホテルのイベント会場 - 臨時電話設置に即応
    <利用機能:フリーアドレス>
    イベント会場で企業が商品紹介セミナーや展示会を開催する場合、多数の臨時電話を商談ブース等に設置してほしい、という要望が多い。IP電話であれば、LANポートと電話機の台数さえ確保しておけば、電話番号の対応付けがサーバーにより自動更新される。従来のPBXのようにその都度、技術者を呼んで設定変更する必要がなく、その分、安価な料金で提供できるようになった。顧客からの急な変更や電話の追加にも即応できるのが強み。


顧客満足度と効率化をトレードオフにしない

伸びる企業は、新しいIPコミュニケーションの導入において、顧客満足度の向上と社内業務の効率化の両方を達成するよう、システムを設計し、運用している。特に、顧客と社員との距離が近い中小・中堅企業においては、顧客の視点を忘れてはならない。これを怠ると、IT投資の失敗だけでは済まされなく、顧客離れが加速してしまう。
図4では、その失敗例を挙げてみた。これを反面教師としてほしい。

その上で、ぜひ実現したいこと、できれば実現したいことを、優先順位を付けながら、具体的に決めていくようにする。

図表4 IPコミュニケーション導入の失敗例
事例内容どうすれば回避できたか
居留守の帝王A氏はいつ電話しても不在。留守電状態で「メッセージをどうぞ。」が流れる。たまたま、同じ会社のB氏に電話をかけた時、A氏の所在を尋ねると「はい、居ますよ」と。それなら、なぜ電話に出ないのかと顧客は、会社の姿勢に対し、不信感を募らせた。運用の失敗。電話がかかってきた時の対処方法を個人の自由に任せ過ぎ。会社もしくは部署単位でルールを決め、それにしたがって運用する。また、想定外の使い方がされていないかも定期的にチェック。
幻のプレゼンス自席にいるはずのC氏は出張中。ずっと離席中のはずのD氏は席にいる。プレゼンス情報は正しくなく、結局、従来どおり、電話して所在を確かめ、いなければ伝言をお願いする羽目に。外部からの電話に対しても同様。伝言メモが紙からPC入力に変わった程度。プレゼンス機能の吟味が不十分。プレゼンス設定は各人が手動で設定するのか、どの部分で自動化が可能か等、できる限り使う側の負担を減らすことが必要。
マメな人ならともかく、手動のプレゼンス設定をしない割合が6割にのぼるという調査結果も報告されている。
待たせたあげくに時間外E社に問い合わせの電話をかけたら、自動音声が「○○については1番を、△△については2番を、・・・」と30秒近く流れ、それにしたがってダイヤルを押すと、何回かの呼び出し音の後に聞こえたのは、「本日の業務は終了しています。ご伝言の方はメッセージを入れてください」という自動音声。50秒も待った結果がこれ? 二度と問い合わせはしなかった。会社もしくは部署全体としての運用の失敗。時間によって自動応答の内容を変えるべき。
業務効率化ばかりが優先し、顧客の視点で考えることを忘れている。
耳障りなダイヤルトーン老人ホームで、入居者と職員を結ぶホットラインと自動プレゼンスによる状態把握を可能にしたシステムが完成。電話機も年配者に配慮したデザインで、使い勝手もいいはず。なのに、利用があまりない。
入居者に尋ねると「受話器をとって聞こえる音がいつもと違って耳障り」と不評。
これは思わぬ落とし穴の典型例。
「プー」というダイアルトーンや、相手にダイアルした時の「トゥルルルル」「プーウッ、プーウッ」というリングバックトーンの音色を変更できない機器、日本のNTTの音を再現できない機器もある。若い世代には全く意識すらできない点が大きな障害となってしまった。
システムを販売するSIer側の知識と経験不足。あえてユーザー側に責任があるとすれば、業者選びの失敗となる。


成否を分けるのは「メッセージ・ポリシー」

IPコミュニケーション導入において、成否を分ける重大ポイントが「メッセージ・ポリシー」の存在いかんである。メッセージ・ポリシーという言い方でピンと来なければ「電話の取り方・取り次ぎスタンス」と考えてほしい。あまりにも初歩的過ぎて、意外とないがしろにされていないだろうか。
新コミュニケーションツールの導入において、ポリシーが明確か、それが導入目的に合っているか、顧客満足度の向上につながるかを確認し、必ず文書化する。
次は、そのポリシーに沿って、どういうシチュエーションでどういう使い方をするか、細かなルールを決めていく(図5)。

これらができたら、SIerやベンダー(以下、SIer)にその内容をきちんと示し、その上で提案をもらう。
もし、ルールに示された動作が実現できない場合でも、ポリシーが確立していれば、そのポリシーを実現できる代替方法などを、SIerは積極的に提示してくれるはずだ。
反対にユーザー側のスタンスが明確でないち、SIerも判断がつきかね、SIerに都合のよい「オススメシステム」をそのまま勧めざるを得ない。結果として、それを受け入れ、導入した後、失敗に気づくことになる。

図表5 ダイヤルイン(各人専用番号宛て)にかかってきた電話の処理方法(例)
プレゼンス機器の基本動作機器の補足動作その他
在席呼び出し音を鳴らし、発呼者の番号から誰であるかがわかる場合は表示(3回鳴って出なければ)サブ担当者の端末に同様の動作
話中発呼者が誰であるかわかる場合は表示 処理方法(そのまま待たせる、折り返し電話、サブ担当に回す、ボイスメール)選択画面を表示(5回鳴るまでに処理方法が選択されなければ)サブ担当者の端末に対し、呼び出し音を鳴らし、相手表示


(「そのまま待たせる」が選択され、さらに5回鳴ったら)サブ担当者の端末に対し、呼び出し音を鳴らし、発呼者表示
会議・来客サブ担当者の端末の呼び出し音を鳴らし、発呼者がだれであるかわかる場合は表示
急ぎの場合は、本人の携帯端末宛に緊急メッセージを入れる
社内呼び出し音を鳴らす 同時に携帯端末の呼び出し音を鳴らす(3回鳴って出なければ)サブ担当者の端末で呼び出し音を鳴らし、発呼者がだれであるかわかる場合は表示
社外 (社内)と同じ

(上記に該当しない場合)部署内の電話の呼び出し音を鳴らし、発呼者がだれであるかわかる場合は表示


IPコミュニケーション特有の注意点

IPコミュニケーションの歴史は浅く、発展途上段階にある。それゆえ、他のシステム以上に気をつけなければならない注意点もいくつかある。

  • 欧米と日本とのコミュニケーション文化の差異 留守電に伝言を入れるのに全く抵抗がない文化を持つ国がある一方で、日本人の多くは伝言にためらいを持つであろう。ビジネスアワーにかけた電話に対し、「人」が応答しないことに、いらだちを覚える人もいる。日本のコミュニケーションはある意味「Wet」である。 IPコミュニケーションのシステムは、Dryなコミュニケーション特性を持つ米国で開発され、それが日本に入ってきている。標準的な設定では日本の環境ではそのまま利用できない、なじまないといったことになるかもしれない。日本では当たり前の「代表電話」制度でさえ、米国にはほとんどないのだから。 国内ベンダーであれば、そういう日本の特性を考慮した製品作りにより、海外ベンダーとの差別化を図っているであろうが、開発の歴史が浅く、機能によっては試行錯誤段階であることは否めない。
  • デメリットを言えないSIerはNG
    IPコミュニケーションに限らないが、どんなシステムにも一長一短がある。ましてや発展途上にあるIPコミュニケーションは、問題点も多く抱えているだろう。
    そのデメリットをきちんと言えないSIerでは、導入後に「こんなはずではなかった」と嘆く確率が高くなりそうだ。
  • 言葉の定義を明確に
    例えば「プレゼンス機能」。自動的に状態を変える機能が付いているのか、手動のみなのか。「IPテレフォニー」にしてもそうだ。IP電話の意味で使う人もいれば、本稿のIPコミュニケーションとほぼ同じニュアンスで言う場合もある。そうなると「IPテレフォニーの実現」と言っても、その意味するところは大きく異なってくる。
    キーワードとなる重要用語でさえ、ベンダーによって解釈・使い方ががバラバラなのだ。異なるベンダー製品・サービスを比較検討するのであれば、必ずそのベンダーでの内容を確認することが必要だ。


顔の見える温かいシステムを

総務省の「平成16年通信利用動向調査報告書(企業編)」によれば、従業員100名以上の会社の平成16年末IP電話導入率は27.8%。現在はさらに導入が進んでいると推測できる。
それらが円滑なコミュニケーションを支える屋台骨となるには、利用者が「温かい」と感じられる、相手の顔の見えるシステムに成長を遂げた時であろう。コミュニケーションツールゆえに、ぜひ「人」を中心に検討していただきたい。


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カテゴリ:

  • 情報化の処方箋

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